九龍庭園

九龍庭園を出してから約2カ月経った。俺はネットがそれなりにざわついたりインタビューの依頼とか来るんじゃねえかと思ってそわそわしながら2カ月待ってみたが何にもなかったので本当にがっかりした。しょうがないから自分で書くしかない。俺はこのアルバムはかなり良いと思っている。

Junes Kと最初に曲を出した直後にJunesからDMがきて、アルバムを作らんかということだった。びっくりして、興奮した。Junesに最初に俺から声をかけたとき、あわよくばアルバムとか作れたらいいな、でも多忙そうやしな、と内心思っていたのでまさか向こうからくると思っていなかった。それが2018年の10月で、そこから放置して、お互いやる気になり始めたのが翌年の4月くらいだった。その間にふたりでexistという曲を出したり、2月にJunesがビートグランプリ2019クラッシュで優勝したりした。その時にお祝いを言おうと思って初めてJunesに電話をかけたが、ワタルさんがJunesのふりをして出たことに1分ぐらい気づかずに「あの、ほんとにJunesさんのビート好きで、アルバムまじよろしくお願いします!!」とか喋ってしまって大恥をかいたりした。マジで殺意を覚えた。

gOTHのデモビートを初めて聴いたときは天変地異起こるぞぐらい思った。荒廃して燃える街が浮かんだ。そしてyoo!くんを呼ぼうと思った(その時はまだCodaという名前だったが)。それまで自分の曲にfeaturingを呼んだことが無かった。俺の曲に他のやつのラップなんか乗せてたまるかと思っていたし、featuringに呼べるくらい信頼できるラッパーもいなかった。4月くらいにお互いの曲を聴いて知り合ってから、ずっと曲を一緒にやりたいねと言っていたけど、これがそのチャンスだと思った。そして最高のバースを書いてくれた。「燃やした車で突っ込む未来 俺らの描いてる文章は全裸」という歌詞がまじで好きで、家訓にしてもいい。yoo!くんとはまだ会ったことない。早く会いたい。

実はCD焼いて売ろう!サブスク出そう!というのもJunesと話していたけど、9月に学校からそれはアルバイト扱いになると怒られ、無理になった。ごめんなさい。ライブも実質禁止やしもう学校やめようかなと思ったけど結局やめなかった。そのせいじゃないけど、夏から病み散らしていたのでツイッターを消した。

11月に東京でイベントがあってJunesとはその時初めて会った。いやJunesだけじゃなくて色んな人と初めて会った。その頃にはアルバムはほとんど出来ていたが、問題はミックスだった。ミックスは手つかずだった。俺もJunesもミックスの経験が無く、どうしようかと思っていた。そこで燻さんの存在を思い出した。燻さんは信頼できるしミックスもばり上手い。燻さんから完パケが送られてきたときは衝撃を受けた。Junesも感動していた。出来た…!と思った。そう、出来た。

いや、まだアルバムタイトルを決めてなかった。適当でも良いんだけどせっかくだし俺は良い名をつけてあげたかった。1週間くらい考えたが全く妙案は浮かばず、どうすっかなと思いながら布団に寝転がって何気なく燻さんとのラインを見返していたら、九龍の話が出ていた。これは後付けの部分もあるけど、俺はこのアルバムで「何か強大な力に対する憧れ、反抗、諦観、そしてそれを取り込むこと」を表現したかった。そしてその舞台として頭に描いていたのが、しっちゃかめっちゃかで荒廃したスラムだった。燻さんとのラインを見て、初めて俺が思い描いていたのは九龍だったと気づいた。そしてその頃買った服に庭園の文字を見つけた。九龍庭園。九龍庭園…。良いタイトルが出来た。

アフリカのvideoはanoinbaeさんに作っていただいた。アフリカはラップでsyrup16gのex.人間みたいな世界観を表現したいと思って作った曲だった。人にvideoを作ってもらうのは初めてだったので送られてきたとき興奮状態で観た。コメ欄で映像の元ネタを挙げてる人がいたけど俺は冒頭のlainしか分からなかった。龍のMVは友達に撮ってもらった。はじめは川で撮ろうとしていたが3月の川を舐めていた。寒かった。転んで尻を強打した。失敗した翌日に俺んちの風呂場で撮り直した。川沿いの空き地で撮っているとき、そばに車に繋がれたボートが置いてあった。変なおっさんが近づいてきて「何しよん?」と言った。説明がめんどくさかったので写真撮ってました、と言った。おっさんはその空き地の所有者らしく、「それならいいんやけど、このボートに触ったら腕、無くなるよ」と言って去っていった。めちゃくちゃ怖かった。

俺はこのアルバムをサンクラでちまちまやっているガキが調子に乗って自己満でちょろっと出した無料配布楽曲集とはまったく思っていない。しかし九龍庭園に満足してるというわけじゃなく、むしろこれから先やっていく上でのガチの布石になったと思っている。俺と~離はアルバムを作っているし、Junesは裏で色々何かやっているし、yoo!くんと燻さんはEPを出すと思う。みんなでやりたいことがいっぱいある。

やっていくしかない。